「バクマン」を読んで漫画家になるには?を考える

先週の土曜日、スーパーへ行った時に週刊少年ジャンプの「バクマン」(第5回)を読んだんですが。

この漫画、最初から読んでいないので、何故主人公が漫画家を目指す事になったのかなど、ネットであらすじを検索してだいたいの流れを把握しました。

漫画家志望だけど絵が描けないので原作者志望になった男の子(なのに漫画の知識がないという矛盾)が
元漫画家志望の男の子とコンビを組んで漫画家になろう、というもの。
 元漫画家志望の男の子には漫画家の叔父さん(故人)がいて、漫画界の辛酸を見ていたので漫画界に対して斜に構えている、とこんなところか。
 その他にも絵描きのほうの男の子にタイムリミットとして好きな娘と結婚するために18歳までにアニメ化するようなヒット作を描く、というのがある。。。。。。

まず今回変だな〜〜と思ったのが、主人公が梶原一騎のような熱い漫画(スポ根)が好きだ、という件。
どう見ても本人が描いている絵とマッチしてないよ、と。

原作者(これ、大場つぐみは実はガモウひろしです、とカミングアウトしているんですよね?)が絵が苦手なせいか、絵のスキルを上げることに一生懸命になっていますが、そんなことよりも自分は漫画で何を描いて何を表現したいのか?のほうが重要だと思うんですよ。

たとえ小畑健のような絵柄を描けたとしても、自分の描きたいジャンルにそぐわなかったらどうするのか?
上手い絵というのは全然万能じゃないんだけどな・・・
むしろ更にリアルで小難しいストーリーを要求されちゃうのにな、と。
漫画というよりも映画に近づいてしまうというか。
よって、バクマンの主人公がスポ根を描くのは絵とストーリーの相性が良くないよ、と。

先日、須田 信太郎の「ウルティモ・スーパースター」と福満しげゆきの「僕の小規模な失敗」を読んだんですが、こういうのを読んでいると漫画っていうのは絵が上手い下手なんてどうでもいいんじゃないか、と心の底から思うわけです。
むしろ彼らは自分の描きたいものを、心から楽しんで描いているぞと。
ある意味、自分の漫画の中で自分を解放していて羨ましい。
この人だけにしか描けない、唯一無二のものだ。
そして上手い絵だけどつまらない漫画より絵が下手でも面白い漫画のほうが絶対にいい。
多くの読者は面白い漫画が読みたいんだから。
漫画はイラスト集じゃないぞ。

それに本当に漫画家になりたいのなら、福光しげゆきのように、イラストでなく漫画を描きまくっているのが本来の姿だと思う。漫画を描きながら絵の努力をするのがベストだと思う。
これなら絵とネームの両方に力がつく。
いくら絵が上手になっても漫画の要求する技術はそれだけでは足りない。
一つのコマの中で要求される絵(情報)はケースバイケースで無限にある。

それと気になるのが最近の漫画家(または予備軍)は、ネームを切る時頭に浮かぶのは漫画でなく「アニメ」の画面なんじゃないかと。
時間と労力を削っているアニメ(顔ばっかりで、説明的な絵がない。体の一部しか出てこない。カット多用。声を消して見ていると意味不明になる)を参考に漫画のネームを描くと、音の助けのない漫画は何が起こっているのかわかりくにになってしまう。
だから最近の漫画は何が起こっているのかわからなくて普通の読者が離れている気がしてならない。
「ちゃんと台詞で説明してあるからキチンと読めばわかりますよ。」というのは只のいい訳。読者はそこまでつき合って読んでくれない。つまらない(わからない)と判断したらそこで読むのを止めてしまう。

もちろん絵が上達するのは何より大事だけど、いつもストーリーやネームの力を見過ごされているようで。
漫画家として長く仕事をしていくつもりなら、山本おさむの「マンガの創り方―誰も教えなかったプロのストーリーづくり」という本なんかも読んで欲しい。(現場ではこういう力=例えば読み切りを描く力を求められていない気がするが。そんなものよりキャッチーな絵を描けよ、という矛盾。しかしそれも絵の力がなくなったらポイ捨てされる運命だ。その時生き残るために必要なのがネーム力。)
自分の漫画をより面白く伝える手段がネーム力だ。
絵だけ上手ければいいものじゃない。

あと、「バクマン」のように自分はストーリーを作れないから原作者を求めて二人で漫画家を目指しましょう、という場合に気をつけて欲しいのは、描き手の方がストーリーの責任を放棄して原作者に依存してしまい、自分は描くの専門だから、と安易に思っている場合。

原作者がいつも合格点に達するようなストーリーを作れると思ったらいけない。
自分で読んでみて面白くなかったら脚色するくらいの批判力がないと。
(自分が読んで面白いと思えなかったら原作に問題があると判断したほうがいい)
その反対にたとえ素晴らしい原作があったとしても、自分のネームの切り方によって平凡な、あるいはつまらない漫画になることだって充分ありえる。
それくらい漫画を描く立場の者は、いろいろ考えなくてはいけない。
(小説の漫画化だって描き手によって違う漫画になる。)

そして他人からの批評は真摯に受け止められるくらいでないと、漫画家なんて絶対に無理!
たった一人の批評も受け入れられなかったら、顔の見えない多数の読者からの批評になんて絶対に耐え切れない。
そういう目にあいたくないなら編集者や友達にどんどん批評してもらって自分の何がいけないのかわかったほうが断然いい。
大勢の読者に楽しんでもらえなかったら商売として成り立たないんだから。
イヤな思いをせずにプロになれる方がまず変だと思わなくちゃ。

好きなことを仕事にできるのはとても幸せなことだけど、漫画を描くってことは、すごく忍耐力がいることで、体力、知力、精神力を使うもので、思い通りにいかない世界で、いつまでも食っていけない世界です。
それを覚悟の上で、「だけど漫画が好き!描かずにいられない!」という人だけが漫画家になれると思います。
by mieru1 | 2008-09-16 21:15 | 漫画を描くこと | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : https://mieru1.exblog.jp/tb/9510707
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
<< あともう少し 散歩道 その2 >>