最近レビューなどでよく見かける「普通に面白い」という感想。
これ、すごく困りますよね。 というかこのような曖昧な言葉遣いが日本人らしいというか。 ハッキリしないのが嫌いなワタシには嫌な言葉です。(笑) 自分としては「どこが面白く感じるのか」が知りたいのにそう言う人に限って具体的にここが面白いと思う、という言葉が無いのです。漠然としすぎて何がいいのかさっぱりわからない。 つまり評価としては及第点だけど「可もなく不可もなく」と言ったところか?と思う訳です。 5段階評価で言えば3以下か? そう考えると「普通に面白い」は褒め言葉ではない。 単に「つまらなくはない。そこそこ。」だと思う。 「つまらなくはない」=「面白い」ではないはずだ。 そして「普通に面白い」という言葉には自分の下した評価に難癖つけられたくない、という下心も垣間みれるような気がします。 つまりその感想について追求されたくない、という逃げを感じるのです。 感想なんて人それぞれなんだから多数が面白いと思うものをつまらないと言ったっていいじゃないか。 そしてそれ(自分と同じ感想を持つこと)を強要するのも変な話だ。(私は面白いと思うけどそれを面白いと感じない貴方は変ですね、とか。それって気持ち悪くないですか?) 本当に「面白い」と思ったら。 そこには興奮が伴うはずだと思います。 面白いと感じたから誰かに伝えたい! そういう感情が入ってくるはずです。 具体的にどこが面白かを言えない「普通に面白い」は変な訳です。 だからワタシはその興奮度で「面白さ」を判断できるのでは?と思います。 例えば。 帰省した時、姉が初めて使うiPhoneについて「こんなふうに今までと生活が変わった!」と教えてくれました。 かなり興奮してアレコレと教えてくれました。 こういう興奮が皆に伝わったからこそあれほどの大ヒット商品になったのでしょう。 では地味な作品には興奮は伴わないのでしょうか? それも個人によって興奮度が違ってくるでしょう。 ワタシは去年読んだ数少ない漫画の中で一番「この漫画はすごい!」と感動したのが 古い作品ですが新潮社から出ていた「ゴッホの生涯」(芝田 英行)でした。 超超地味な漫画です。 その次が「料理人ーつくりにん」(小島剛夕)。 その次が「ブラック・ジャック創作秘話」(吉本浩二)。 (全部地味やねん。さすが地味な漫画家。いずれの作品も主人公が一所懸命自分の人生と闘って生きているところが好きです。そういう意味で梶原一騎作品が好き。) 「ゴッホの生涯」はちゃぐりんの伝記漫画の参考に読んだんですが、そのとっつきにくい絵柄で損をしていると思うものの、見事にゴッホの生きた世界へと誘ってくれました。 ゴッホの泥の中を這いずり回るような、どうにもならない生き方を見事表現しているというか。 この絵柄だからこそそういった世界を表現できたのだと思います。 例えばこの漫画を谷口ジロー氏が描いたら、もっと注目を浴びたでしょうが 同じような陰鬱とした世界が表現できたとは思えません。(別の作品になっている) 作者自身もゴッホになりきって描いているのがビシビシと伝わってきました。(漫画家版北島マヤみたいです) 漫画の世界だけどものすごいリアリティを感じ、ワタシもゴッホという人物を感じました。 そこに「すごい!」と感動したんでしょうね。 この作品自体、発行部数も少なく日の目を見ずに「知る人ぞ知る」作品になってしまったようです。 その後この漫画家さんが漫画を描いているのかは不明ですが、同じ漫画描きとして 渾身の一作を描けただけでも勝ち組ではないか!と羨ましく思いました。 売れた売れないなんて関係ない!いい物はいいのです! (良い物が必ずしも売れる訳ではないのです) ーーということで超地味な作品でも興奮することはあるのです。 「普通に面白い」なんてつまらない。 「普通に面白い」には興奮が感じられないのです。 そしてワタシは今年もそういった「面白さ」に出会いたいものです。 (自分自身もそういう会心の作品を描きたいものです。切に。) ああ、そう思うと朝青龍の相撲は本当に面白かった・・・・・ あんなに相撲で毎日興奮したことは無かったわ。
by mieru1
| 2012-01-10 00:59
| いろんな感想
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Comments(7)
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alban
at 2012-01-16 23:47
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最後に朝青龍のことを言及されてましたので、関連のことを。
朝青龍をコラムでつねにくさしていた作家の「高橋治」ってご存知ですか。 ぼく、ずーっと「橋本治」と勘違いしてまして、好感を持っていた作家でとてもあんな悪辣なことをいいそうにないのにとずいぶん当惑してたのですが、別人の三流作家とついさっき判明しました。
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mieru1 at 2012-01-17 17:23
>albanさん
こんにちは。 高橋某さんですね。ここ数場所前からあの人のコラムも読んでいないな〜〜。多分今の状況は某さんには大歓迎、最高に面白いってことになっているんでしょうね。 橋本治さんは、あんなに偏ったものの見方をする人じゃないと思います。
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alban
at 2012-01-18 08:56
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そうですよね。
高橋なにがしをよく見ずに「橋本」と読んじゃってたんだな~。ばかですね。 でも、思わぬところで思わぬひとが朝青龍を紋切り型で批判したりしてたじゃないですか? まあ、あとから見ればたいしたひとはいなかったんですけど(笑)。
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mieru1 at 2012-01-18 23:19
>albanさん
見間違い、よくあることです。(笑) バッシングしていた人達はもうすっかりあの頃のことなんて忘れているんでしょうけれど我々ファンはいつまでも忘れられませんね。 確かに自分の好みや偏見で人を断言できる人っていうのは浅はかな感じがしますよね・・・。(そういう自分もそうなんですが・笑)
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椎茸
at 2013-10-11 23:43
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はじめまして。
僕も普通に面白い、という言い方は嫌いです。 面白さというのは富士山さんの仰るように普通じゃないものだと思うので。 ジワジワと良さが伝わってくる漫画も多数ありますが、 そのときに感じる静かな高揚もやっぱり「普通」ではないと思います。 ただ、とても面白いんだけど、具体的にどう素晴らしいのか表現できないこともあります。これは自分の教養不足でしょうね。 今の若年世代にとっては普通に~というのは誉め言葉らしいですが、 あまり評判の良くない作品を誉めるときによく見受けられるのも事実なんですよね。 好きなものを否定されるのは辛いことなので、心情は理解できるんですが。
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mieru1 at 2013-10-13 01:30
>椎茸さん
初めまして。すっかり放置しているブログにコメントありがとうございます。 「普通に面白い」に対する違和感、共感ありがとうございます。 些細な事にも疑問を感じるとそれはどうしてだろうと考える癖がありまして反応してくださって嬉しいです。 今の子にとって「普通」が褒め言葉ですか。よっぽど他人と比べられるのが嫌いなのでしょうか。同じ人は一人としていないんですけどね。目立ちたくないくせに自己承認欲求は強い気もしますね。 最近思うのが「売れている作品が必ずしも傑作ではないのに何故売れるのか?」というのは作品の内容に関係なく自分も皆と同じ作品を楽しいと感じる「普通の人」に所属したいのかな?と。 多数の中にいる安心感というか付和雷同ですよね。これは考える事(感想を考える)を放棄しているとも思えます。
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mieru1 at 2013-10-13 01:30
(承前)
漫画作品も沢山ありすぎて自分で好きな作品を探す手間を省いて手っ取り早く話題作に手を伸ばす。これは当たり前なのですが話題であり続けている間は批判も許さない空気を感じます。これはネットのせいでもあるでしょうが。そういう風潮はあまり好ましいものではありませんよね。 ヒット作だから面白い、んじゃなくて「面白いか面白くないかは自分が決める!」これでいいと思うんです。
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