「火の鳥 黎明編」

3月11日から別の世界へ来てしまったような気がする。

戦争とは無関係だった自分のすぐそこで戦争が起きているような。

大地震で多くの土地が壊滅状態になった姿、多くの死者。そして放射能汚染の危機。
そこで今も決死の思いで汚染を食い止めるべく闘っている人達がいる。
一体どれだけの人々が命を削るのだろう。
これからは放射能という危険に日常的に晒されるという予想外の展開。
すでに人生の半分は折り返しているだろうから今更どうってことはないですが次世代の子供達が心配だ。
とにかく放射能についてはチンプンカンプンなので、どの程度自分に影響があるのかよくわからないのが本当のところ。
そしてこれから日本はどうなってしまうのか。


震災後これほど身近に「死」を感じたことはありませんでした。
軽い絶望感の中で、ずっと心に引っかかっていたこと。それは

「手塚治虫の『火の鳥』と『ブラック・ジャック』が読みたい。」

でした。


そこで旦那にリクエストして埋もれた蔵書の中から「火の鳥 黎明編」を探し出してもらいました。

この「火の鳥 黎明編」は小学4年生前後に読んだのですが、その頃手にした「火の鳥」3冊はそれこそ何度も繰り返して読みました。

いずれも戦や地球滅亡の中で
人間とは、生きるとは、命とは何か。を問うテーマの漫画ですが、きっと今回のことで漫画から何か手がかりが欲しい、と思っていたんでしょう。

子供の頃何度も読んだのに、数十年ぶりくらいに読む「黎明編」は色んなシーンで泣けました。

特に登場人物の一人、ヒナク(主人公の姉)の台詞に泣けました。
このヒナクたちの国はヒミコによって自分たち姉弟を除いて皆殺しにされてしまいます。
そして敵の間者だった夫・グズリと今は暮らしているのですが・・・・


「だけど・・・グズリを殺して・・・なにになるの・・・
それでうらみが消えるかしら・・・・
死んだ村の人はひとりももどってはこないわ・・・
それよりも村をもとのように発展させるのよ
わたし・・・・こどもをつくることにしたの
どんどん産んで・・・・・百人も二百人も産むわ
(略)
何千人にもなったらまた村ができるわ。」


ワタシはこの台詞が読みたかったんだなぁ、と思ったのです。
ヒナクは普通の女性ですが、この前向きな強さ!たくましさ。これが人間の良いところなんだなぁ。


このシーンの後にもヒナク夫妻は火山の噴火に遭い、逃げている最中に子を失うのですが
夫がヒナクに「あきらめろっ  また・・・新しく産むんだ!!」と言い聞かせます。
今は駄目でも生きている限りまだ先がある。希望を捨てない強さ。
ここに人の強さを感じます。

手塚治虫漫画の死生観が染み付いているワタシは、「火の鳥」を改めて読むことで
どんなにひどいことになろうが、人間はいつかきっと雑草のように立ち直ってみせる。
どんなことがあろうと命は連綿と続いていく。
そう手塚先生から勇気づけられたかったのかもしれません。
本当に戦争を生き抜いてきた人の漫画は命に対する重みが違う。そして精神的に強い。
そういう想いが手塚作品のテーマになっているのは言うまでもありません。

こんな時に心の支えにと思い出すなんて
小さい頃に「火の鳥」を何度も読んでおいて本当に良かったな、と思いました。


これから先、まだまだ原発事故がどんな結末になるのか、そして放射能汚染がどのように広がっていくのかわかりませんが、自分のできる範囲で自己防衛していくしかないな、と観念してます。
放射能は数十年とも数万年も残留すると言われますが、悲観的になるばかりではなく
どのみち生きるということは死ぬ事に向かっている訳だから「今を生きる」ことをもっと大切にして残りの人生を悔いないようにするのが一番なんじゃないかな、と思います。
ここで厭世的になるか、享楽的になるか、普段通りに生きるか全て自分のこと。

そういえばこの作品に出てくるヒミコは永遠の命と権力を求めるが故、彼女の人生の後半は醜いです。
花の時期(人生の絶頂期)が幸せで後は下り坂なのではなく、その後どんな実を残して終わるのかが大切なのではないかと自分は思うのです。
ワタシのイメージする「実」とはその人が完成した姿。

もちろん結実前に死が訪れることもあるでしょうが、死に抵抗して生き延びることより、「今」を大切に生きてその時、幸せや充実感を感じることが人の幸せなんじゃないかな、という自分の考えに重なる部分が「火の鳥」の中にありました。



火の鳥「人間は虫よりも魚よりも犬や猿よりも長生きだわ

その一生のあいだに・・・
生きている喜びを見つけられれば
それが幸福じゃないの?」


ーーーう〜〜ん、手塚先生はもっとシンプルですね。
こういう台詞があったこと自体もう忘れていましたが、多分自覚していない部分で影響は受けていると感じます。
そしてたかだか小学生に、こんな難しいテーマを漫画で面白く読ませ、命について考えさせた手塚先生の才能の凄さに改めて敬服いたします。
このページ数(336ページ)でこんなに深いテーマがあって、かつ面白く、子供にもわかる漫画を描ける人が今、どれだけいることでしょう。

やっぱり手塚先生は凄いや。(涙)





<オマケ>







「火の鳥」は実家にあるのですが、旦那所蔵の漫画は古本屋で買ったきり封も開けていませんでした。
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読み進めるとこんなものが挟まっていました。
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100円で買って懐かしの伊藤博文さんがっ!!(しかもピン札)

これは吉兆なのでしょうか????
こんなことで気分が上がるとは。手塚先生、元の持ち主様、どうもありがとうございました。
by mieru1 | 2011-04-04 23:23 | いろんな感想 | Trackback | Comments(0)
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