野望は捨ててはいない

最初から「学習漫画家」を目指している漫画家志望者はいないと思います。
もちろん自分もそうでした。
が、編プロや学習誌関係で仕事をもらう機会が増え、それで収入を得ることが多くなり
落ち着くところに落ち着いてしまった、という感じでしょうか。

今でも漫画雑誌で描きたいという気持ちはあります。
今の仕事をしつつ、何度か投稿してチャレンジしてみたこともあります。
ですが、途中で諦めてしまいました。
何故かというと、雑誌に載るまでのやり取りが「あまりにもロスが多い」ということが上げられます。


年齢的にいって30代後半に入っていたのでここでなんとかしないと、と年齢制限が気になり始めていました。
子供も手がかかる時期で、家事、育児の合間をぬって漫画を仕上げるのはかなりきつかったですが、何より収入が少なかったので、少しでもいいから毎月固定収入が欲しかったので必死でした。

児童向け作品(31ページ)で、カンフーギャグものを投稿用に描き上げました。

2002年? A社に持ち込み。
担当編集者のアドバイスを受け2度直しの後、賞に出すも落選。
この時、担当さんも結構な手応えを感じていたようですが、私の作品が社内的なニーズに応えられなかったようです。
自分では子供が読んで面白いものに仕上がったと思ったのですが・・・
その後担当者さんが異動して、受賞しなかった私もそのままフェードアウト。

その後かなりたって
せっかく描いたのに(漫画は一本仕上げるのにかなりの時間がかかっている)無駄にするのは惜しいと思い、B社に同作品を持ち込み。
担当者さん、おおいに気に入ってくれる。
初めての打ち合わせで意気投合、このままこの路線で会議にかけてやっていきましょう、と企画案、取材予定など立ててくれてこちらも安心したのもつかの間、
会議で編集長が「そういった暴力的なものはうちの雑誌のカラーじゃないから。」ということで白紙状態に。
 結局そこで「作家リスト」のようなものに入れられ、「あなたに合いそうな企画がありましたら連絡します。」とのこと。
まるで「漫画家の派遣会社みたいな仕組みだな。」と思い、漫画を作るシステムが前と違うのかな、と思う。
これじゃ誌面に載ることはまずないだろうな・・・とお手上げ状態。(対処のしようがない)
その後そのリストから紹介された学習漫画の単行本の仕事(超安い原稿料)が半年後くらいに入る。

2003年 
今度はC社に青年誌向けにスポーツ漫画を新たに持ち込み。
編集者さんは、まぁそこそこ描けると思ってくれたみたいです。
佳作はいけるかな、とおっしゃってくれました。
この時、自分からいろいろ質問をしましたが、私が会ってきた数少ない編集者の中では
一番漫画について的を射たことを次々と答えられる人でした。(たいへん勉強になりました)
佳作入賞しましたが、特に連絡がくることもなく、まぁその程度にしか思っていなかったということでしょう。

それに自分にとってはたった「一人の編集者」さんでも、相手にとっては「沢山かかえている新人漫画家のうちの一人」ですから当然かもしれません。
自分も絵柄について、あまりに力が無さ過ぎたことにこちらの編集部に積極的にかかわっていこうと思えなくなっていました。
(ここで真面目に絵のスキルアップ=デッサンの練習をしていこう、と決心しました)

佳作をとったことで少しだけお金が手に入りました。
もう、連載なんかの不確かなものより賞金稼ぎをしたほうが手っ取り早いのではないかと思うようになりました。

2004年
D社に以前描いた児童漫画を持ち込みました。
ちょうど旦那も持ち込みに行っていて、そこの担当さんが若いけれど話がわかる人だというので、その方に持ち込みに行きました。
ちょうど賞の募集締め切りにかかっていましたが、とても気に入ってくれてあずかってくれました。
編集部内でも評判が良く、特に副編集長さんは「全ての評価に5」を入れてくれたと聞き、「自分が面白いと信じて描いた漫画が評価されたんだ。」ととても嬉しかったです。(今でも)
そして佳作をいただきました。





そして読み切り掲載目指して打ち合わせです。

何度か打ち合わせをしてやっと会議に出してもらえましたが
ちょうど主人公の設定が新連載とかぶるということでダメでした。
次はネームからではなく、先にキャラクターから作っていきましょう、とのことになりました。(そのほうが時間的ロスが少ない、ということでしょうか?)
同時に持ち込みしていた旦那のほうも同じようにキャラ作りを先にすることになりました。

「キャラクターデザインの他にも、『こういうオモチャに展開できる』というアイデアがあると会議で有利です。」とのこと。(担当さんも漫画の部署に入りたてで、編集部のやり方がよくわかってなかったみたいです)
しかし自分の今までの漫画の作り方からいうと、「先にオモチャになるようなキャラクターありき」というのがどうも逆に感じてしまい・・・
かの「アンパンマン」だってそんなことを考えて生み出したものじゃないし、と違和感を持ちました。
自分が描きたい主人公は自分を代弁してくれるような分身みたいなものですし・・・

雑誌自体の売り上げが芳しくないので、ポケモンのようなキャラクターを作って一発当てる、博打のニオイを感じました。


ーーーーそうこうしているうちに、編プロさんを通して学習漫画の連載をいただくことになり、翌年には「それゆけ!徹之進」の週刊連載が決まって忙しくなってしまい、持ち込みどころではなく、そのままになってしまいました。

ただ、旦那のほうはキャラも決まり、やはりこれも編集部では評判が良く期待していたのですが、何度も会議にかけては編集長の「こういうのじゃないんだよな。」でポシャることを繰り返すうちに本人のモチベーションが下がっていきました。

B社でもそうでしたが、「担当者がオーケーを出したら雑誌に載る」というのが
大昔持ち込んだ時のサンデーでのシステムだったので、最後で編集長がダメを出す、というロスに頭に来たのも確かです。
だったら先に編集長が欲しいと思うものを提示するのが筋じゃないか、と。
それにつき合わされる漫画家、担当編集者の労力と時間を考えていない現場だと思いました。(それこそ漫画家は掃いて捨てるほどいる、と思っているのでしょう)

サラリーマンの場合はまだ、実りのない会議の時間でも給料が出ますが
漫画家の場合は作品に載らないと収入にはなりません。しかも掲載されてギャラが入るのは数ヶ月先です。

無報酬という点では編プロが版元に何年も企画を持ち込んで育てたあげく、ポシャッた話なども聞きます。
が、会社員とフリーの立場では保障が全然違います。そういう立場の人と同じ扱いというのがキツい。
収入にならないとフリーは死んでしまいます。
せめてそういう労力に少しでも手当が欲しい、と思います。

結局、漫画家を目指したいなら先生の下で修行しつつスキルを高め、編集者さんとコミュニケーションをとってそこを足場にして出ていくか、一人でやるなら二足の草蛙で別に収入を確保しておかないと「死んでしまいます」。
すぐに収入になるなんて考えないほうがいいです。
まして大金になるなんてことはよっぽどの才能と運だと思います。

そういう自分も今の仕事をやりつつ漫画のスキルを上げて、いつか漫画雑誌に載る野望は捨てていません。
反響が少なくて報われない学習漫画ですが、今自分がやっている仕事には誇りを持っていますし、面白い部分もあります。
今やっている仕事が漫画の修行になっているはずだと思っています。
例えばいつも自分が描きたい仕事ばかりがあるわけではないので
お題を与えられることによってどう料理して面白くしていくか
作品作りの頭を鍛える面もあるからです。
学習漫画も普通の漫画も訴えかける目的が違うだけで同じところは沢山あります。

漫画家になりたかった動機も自分の漫画で読者を楽しませたい、というものなので
沢山の読者に読んでもらえる漫画雑誌は自分の夢でもあるんです。

満足できる域に達することは中々できませんが、あくまでも目標は高く!
そうしないと心が折れそうになる自由業者です。

それにしても思うのが、担当者や編集部内で評判がいい作品を上が潰してしまうという不思議。
まず身内の中で評判のいい作品が出る確率のほうが珍しいと思うのですが。
虚しいのは、そういう会議を経て作る雑誌でヒット作が出ないことです。
そこまで時間と労力をかけているにもかかわらず・・・。
読者が求めている漫画と編集部の求めている漫画がズレている気がしてしまうのです。
by mieru1 | 2008-06-17 20:15 | 漫画を描くこと | Trackback | Comments(11)
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Commented by kadoorie-ave at 2008-06-17 22:03
いつもながら、参考になると言うか身につまされるというか...昨日もフリーランスの知人と、お互いの身の上に付いて話がはずみ(はずむっていうのかな..こういうの)ました!
『会社員とフリーの立場では保障が全然違います。』っていうの、実にそうですよね〜〜生活費、交通費、年金に健康保険代、次のものを作るための資料や材料費....打ち合わせだって裸で行くわけにはいかないしなあ....。
『明日はどっちだ!』を、ほとんど動物的な勘で嗅ぎ分けている日々。こういうのがある程度平気な神経じゃないとフリーランスを続けられませんね...エッヘン!!
Commented at 2008-06-17 22:14
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by mieru1 at 2008-06-18 16:27
>kadoorie-aveさん
フリーの人間は必然的に「楽観主義者」にならないと病気になってしまいそうですね。来年のことを今から心配しても誰にもわからないし。

>>打ち合わせだって裸で行くわけにはいかないし

持ち込みに行っていた頃は本当にお金がなかったので往復の交通費も痛かったです。
この時ほど東京が遠く感じられたことはありません。
(今でも「上京」するのを控えてます・笑)

Commented by mieru1 at 2008-06-18 16:32
>鍵コメさん
コメントありがとうございます。

なんだか腑に落ちない話ですねぇ・・・
身内だからそのようなことになるのでしょうか?
本来なら払われるべきことですが
それだけ会社が苦しいということなんでしょうね・・・

仲間ということで同じように扱われるのも困りますね。
確かにテンション下がります。
Commented by りんご at 2008-06-19 21:39 x
 こんばんわ。
 先生実力はあるけどHITにはって感じなのかなー?
 出版社に掛け合えば紙面に載るとか、単行本収入とか難しくても
 出版社を経由しなければ、自身の作品を直接ユーザー(読者
)に発信する事で利益上げられそうですけどね?
Commented by mieru1 at 2008-06-20 22:35
>りんごさん

コメントありがとうございます。
今はネットもあるし、手軽に発表できる場はありますよね。
問題はお客さんが来てくれるなんですが・・・・(汗)。
ただ、個人でやるには客観的に見た「目」がないので独りよがりになる恐れもありますね。
まぁそれも、旦那とか他人に評価してもらえれば済むことで。

持ち込みし続けても芽が出ないようであれば、ネットで公開ということもあるでしょう。
ただこの場合、(無収入なので)趣味でやっているということになるんでしょう・・・

Commented by RINKA at 2008-06-22 12:09 x
はじめまして。少し気になったので書き込みします。
>会社員とフリーの立場では保障が全然違います。
編プロも企画がポシャったら、無報酬で会社が潰れるので、安穏とはしていませんよ。フリーの人から見るとまだましなんじゃない? と思われるかもしれませんが、無報酬という事では変わりません。その分、社員は新しい仕事を無報酬の超過残業でしないといけませんし…。
編プロもフリーも企画が潰れると生活がたちいかなくなるのは同じと認識し直して頂けると有り難いです。元編プロ社員からのお願いです。

>最後で編集長がダメを出す
これはつらいですね。
根本的なダメだしは、最初の段階ですませるのがマナーだと思います。
また、かなり実作業が進んだ企画を発注側の都合で中止したら、作業分のお金を幾らか払うべきだと思います。(また払わないから最終の段階で根本的なダメだしをしてくるのでしょう)
ただ、この企画段階は漫画家を育てる期間と考えると話が変わります。その場合は漫画家以前の人は保留として、漫画家の人の企画倒れは多少お金を出すべきかなと思います。

長々とすみません。漫画以外の本に関わる者ですが、応援してますので頑張って下さい!
Commented by mieru1 at 2008-06-23 02:05
>RINKAさん
コメントありがとうございます。

>>編プロも企画がポシャったら、無報酬で会社が潰れるので、安穏とはしていませんよ。

言われてみて初めて気づきました。ありがとうございます。
人数の少ない編プロほどダメージは大きいでしょうね。
ただフリーの場合、ネーム一本に取りかかるにも、その他の仕事に手が回せるわけではなし、形にならない限り「無職、無収入」の立場なのが本当にキツいです。

今まで自分周辺のことにしか目が行っていませんでしたが、この「無報酬」というのは何も出版関係だけでなく、日本ではとても一般的なことじゃないかと思うようになりました。
(企画をコンペで出して、没になったら他のコンペで他所の会社がその企画を安く提供していた、等)
こういう形にならない知的労働に無報酬という態度を取るのは行く行くは使う方にも損になっていくと思うんですよ。

Commented by mieru1 at 2008-06-23 02:13
>>続きです

そういう労力に対して只だからいつまでも叩き台程度にしか思っておらず、そこに至るまでの労力、経緯を軽視しているということは、関わってきた者のやる気、熱意を奪います。
一緒に関わってきた編集者も何をすればいいんだ、とやる気を失い、結果いい作品が出来ないどころか協力していた漫画家も逃げて行く・・・となると、本当に編集者も疲れると思います。
(担当者さんには本当に悪いのですがこちらも生活がかかっているので、当てもないことに時間をかけていられない。)

モノ作りの現場で働く者のやる気をそぐようなことをして何がいいことがあるのか。(ダメだしだけでフォローもない)
気持ちが沈んだところでは迷う一方です。
いいアイデアが出る確率も低くなっていくでしょう。

出版業界の低迷はいろいろな原因がありますが、ここに生きている以上、泣き言は言わずにしがみついて行くしかないんですよね。
いろいろありますが、お互い頑張りましょう!
Commented by RINKA at 2008-06-24 09:15 x
返答ありがとうございます。
どうも編プロとフリーの立場がというより漫画の企画進行が問題な気がします。『ネーム一本に取りかかるにも、その他の仕事に手が回せるわけではなし』は漫画特有だと思います。
漫画以外の出版物は初期の内に正式スタートか分かり、傷の浅い内に他の仕事にかかれます(たまに手痛い時もあり)。浅ければいいのかという問題はありますが、漫画業界も漫画家側のロスが減るようになるといいですね。
(あと、私は漫画以外の書籍で社内制作する編プロにいたから同じ立場と言っており、みえるさんは外部に作業させる編プロのことをさしてるのかも…。だから意見が違っているのかなと)

●漫画が無報酬…
お金が絡まないと発注者は真剣に見ないんですよね。書籍も赤字は何回までと言わないと際限なく赤字が入ります…。やはり漫画の企画もどっかの段階からお金が発生するべきもしれませんね。(すると案外お金の発生しない初期でも真剣に見るようになります。)

>企画をコンペで出して…
これに近いことを経験しました。みえるさんの意見に同意です。

>お互い頑張りましょう!
そうですね。なんだかんだ言って本が好きですし。お互い頑張りましょう!!
Commented by mieru1 at 2008-06-26 00:35
>RINKAさん
やっぱり漫画界のやり方に問題があるようですね。
私はこれが一般的なのかと思っていました。
今回の騒動がきっかけで色々な所から告発がありましたが、知れば知るほど漫画家なんかにならないほうがいい・・・と漫画家予備軍の人たちに言いたくなってきました。(汗)

>>書籍も赤字は何回までと言わないと際限なく赤字が入ります

うわぁ、そういうものなんですか。それじゃいつまでたっても仕事が終わりませんね。
結局自分が作業しないから痛みがわからないんですよね。
作業は人任せ、お金も原稿料以上出さないから真剣に見てくれないなんてキチンと自分の仕事しろ〜〜〜!と言いたくなりますね。

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