学習まんが家の生活

なんか雷句先生の一件でネットが燃え上がっているようですね。

ワタシごときのブログのアクセスが今までにないくらいになってて正直ひいてしまいます・・・(こんな誰も知らないような漫画家のブログまで訪問していただき、恐縮です・・・少しは役に立てたのかしら)
どこかにリンクされたのか、刻一刻と数が増える・・・・(汗)
何か無責任なこと書けなくなっちゃいますね。

ところで今回の一件で、漫画家さんがポツポツとブログで発言されているようですが
漫画雑誌とは無縁なところで漫画を描いている身としては、非常に興味深いです。
ですので、今回の雷句先生による関係者の告白は一応同じ漫画家としていろいろ知る機会を与えられてよかったです。
しかもなかなか表立って発表できる内容ではないので、先生方の勇気には頭が下がります。(特に原稿料はタブーなので)

せっかくなので、ここで漫画雑誌ではない、学習漫画で食べている者の世界を少し紹介しましょう。(あくまでワタシ個人のことなので、他の漫画家さんも同じとは限りません)

ワタシのような学習関係の漫画を描いている者にはまず「印税生活」とか「担当編集者」というのは無縁の世界でして・・・
もちろん仕事をするにあたっては担当者はつきますが、こと「学習まんが」は
担当者が「漫画専門」の編集者じゃないので、漫画の専門家であるワタシが作品の責任を取らなくてはなりません。

もちろん担当さん(あるいは編プロのライターさん)がシナリオを渡してくれることもありますが
やはりそれも「漫画専門」の原作者ではないので、あまり使えないこともしばしば・・・
あきらかにページ内に収まらないとか、ストーリーの始まりの部分しかなかったり、
漫画としてちっとも面白くない話(ライターだけに往々にして会話で全てが進む。絵的な表現がない)だったり等々・・・・
(というか、編集者=ストーリーを作れる、ではない。。)

そういう時はなるべく意図を汲むようにします。

場合によっては、無理難題を言われることもありますが、無理な場合はその理由を説明し、妥協案を考えて折り合いをつけます。

そこで漫画を本職としている自分が内容と狙いに添うようにストーリーとキャラを考えて漫画を作ってゆきます。
わかりやすく言えば、「学習テーマ」という「お題」をもらって漫画を作るということですね。

もちろん読者は小学生など、年齢層が低いので絵を見ただけで理解できるように構図を考えたり、内容が理解しやすいようにネームを工夫します。
文章もなるべく短めにするために、一番ふさわしい単語を選び
一つの単語にいくつもの意味を重ねたり・・・・


それには自分がそのテーマを理解していないとわかりやすいネームが切れないので
資料などを読み込みます。
自分でイマイチ面白くないなと思えば納得できるところまで書き直します。
(そう毎度納得いくものができるわけではないですが・・・)

それゆえに「自分が船頭になっている」という責任感がありますし、やりがいがあります。

そしてネーム、完成原稿をチェックしてもらいますが、たいていテキストの修正で終わってしまいます。(もちろん要望があったらそれに応えます)

そして普通漫画家さんが印税で生活が成り立つ、というのも我々には関係なく
原稿は「買い取り」方式なので、その後いくら増刷しようが一切手元には入ってきません。(ところによってはイラストを流用して料金が派生しないこともあります)
そしてたいてい原稿料は一万円以下です。
ひどいところは4千円というところもありました。(二度とその料金で引き受けたくないです)
単行本の場合はグロス計算のことも。(一冊○円で、という具合に)
ですので、基本依頼があったお仕事は全て引き受け、アシスタントは一切使わない!
つまり収入は「原稿料のみ」!
原稿料金はアナログもデータも変わらないと思っています。
どちらが高い、と聞いたことがありません。(ワタシはデータ入稿)

そして締め切り厳守。
担当さんとはいい関係を築く。
いい作品を作って次に繋げる。( 次があるのか?という世界ですが)

ーーーこれがワタシの仕事のモットーです。

漫画雑誌で描いている人だけが漫画家ではない、ということを知っておいてください。
そこは印税も読者からの反響もない世界なんです・・・・(一所懸命仕事をしている者としてちょっと寂しい。業界の人からも相手にされないしね)
しかも会員限定の媒体も多いし。
とかく低く見られる学習漫画家です。


>>追記 青字の部分を書き足しました。(6月15日)
by mieru1 | 2008-06-11 00:11 | 漫画を描くこと | Comments(13)
Commented at 2008-06-11 19:40 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by mieru1 at 2008-06-11 23:59
>鍵コメさん
どうもありがとうございます。
今日のアクセス数が1375。
いかに皆さんが興味あるのかが伺い知れます。
この分じゃ編集部はてんてこ舞いでしょうね。
Commented at 2008-06-12 09:16 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by yosi at 2008-06-12 11:21 x
学習漫画の世界で優れた人というのは優れた教師と同じではないかと思います。
非常に教え方のうまい先生の場合は生徒もその教科が頭によく入りますし、
逆に教え方の下手な先生の場合は生徒も授業そのものがつまらなくなります。
みえる先生はうまい先生だと思いますし、
素晴らしい仕事をされていると思います。
Commented by mieru1 at 2008-06-12 21:50
>鍵コメさん
温かいお言葉、ありがとうございます。
なかなか注目されない分野なので、そう言ってもらえて嬉しいです。
これからも子供たちにとってより良い作品を目指して精進していきたいと思います。
思ってがんばります。
Commented by mieru1 at 2008-06-12 21:54
>yosiさん
いつも励ましてくれてありがとうございます。
おっしゃる通り、学習漫画は先生の役割もあります。
私は絵本作家のかこさとしさんがとてもいいお手本になってます。尊敬もしています。
わかりやすいだけでなく、子供の興味の引き出し方の上手さも素晴らしいです。
子供たちの知的好奇心を満足できらたいいな、と思っています。
Commented by りー at 2008-06-12 22:54 x
私は、最初に今回の訴訟の件を知ったのが、みえるさんのブログなんですよー。ここは、いろいろ勉強になりますわん。今回の「学習漫画家」の話も、なんとなく旨く言えないけど、凛としてすがすがしい心意気を感じました。お互いがんばりましょう!
Commented by 日直 at 2008-06-13 07:11 x
 はじめて書き込みさせて頂きます。
 富士山先生は「読者からの反響もない世界」とおっしゃっていますが、それは雑誌のアンケート葉書等のシステムがないからだけの理由だと思います。
 私自身は、子供のころに読んでいた学習研究社から出ていた学習漫画が大好きでした。キャラクターたちにも魅力があり、「マンガ」として好きだったのです。いまだにそこで得た知識をちょっとした雑学として披露してたりもします(笑)。
 確かに所謂「マンガ評論家」の方などはあまりとりあげないジャンルであるかもしれませんが、今でも読者であるお子さんはそれこそワクワクして読んでいると思っています!
Commented by mieru1 at 2008-06-13 21:29
>りーさん
ええ、お互いがんばりましょう!

>>凛としてすがすがしい心意気

そんな風に言ってもらえると嬉しいですわ。
自分の目指す漫画が漫画黄金期の古典的なものなので、
おんぼろ古武術道場で一人修行している気分になっちゃうんですよ・・・(笑)他流試合もないし。
もしかして自分、間違ってないか?否、そんなことはない。でもやっぱり・・・とかね。
Commented by mieru1 at 2008-06-13 21:36
>日直さん
はじめまして。
アンケートと無関係だから。そうなんですよね。
しかも子供読者がアンケートもない本に手紙を出すなんてことがないから余計感想を聞いてみたいな、と思ってしまうんですよ。

朝日小学生新聞では、毎週漫画の感想をいただいたのですが、今は個人情報保護法で、コピーしかもらえず、結局お手紙くれた子供たちにも返事を出せなく悲しいです。

>今でも読者であるお子さんはそれこそワクワクして読んでいると思っています!

そうあってほしい、と妄想しておきます。自信ないけど・・・・(涙)
Commented by 遊部康男 at 2014-08-21 13:06 x
はじめまして当方この4月まで毎日小学生新聞に漫画を連載していたものなのですが連載が終わり、ただ今、無職となったのですが富士山みえるさんは長年、漫画家として生計を立てておられるようなので、お聞きしたいのですが漫画家として生き残るコツというか、そのようなものがあれば、お聞きしたいのですが…
あつかましい質問でスンマセン〜
Commented by mieru1 at 2014-08-22 13:09
> 遊部康男さん、ようこそ。
この業界で長年やっていると実力があるから必ずしも生き残る訳でもないし、(雑誌が廃刊になるなど)多分に運に左右される部分が大きいんじゃないかと思います。スポーツ選手と同じように体力的にも衰えていきますしある年齢までになると余程のビッグネームの先生か運があった人しか生き残っていないんじゃないかと思うくらいです。

ただ人目に触れないだけで地道に漫画の仕事をしている方もおられますので、やはり自分の絵柄や何が得意なのか、どういう客層を選んだらいいかと攻略法はあるかと思います。遊部先生の実績を活かした営業、人脈を使うのが一番有効だと思います。いわゆる商業誌だけでなく、地元の偉人漫画制作の提案、広報、ミニコミ紙等需要があるかもしれません。

と思いつくまま書いてしまいましたが先生の得意ジャンルにスポッと収まる仕事を探されるのがベストなのでは、と思います。
Commented by 遊部康男 at 2014-08-22 16:03 x
ご丁寧なご返答、ありがとうございます。
そうですね。当方、滋賀県在住なので地元の偉人漫画等を地元の企業なんかに売り込むのもいいですね。参考になりました。
ありがとうございます。
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