君はこの低賃金に耐えられるか

今日やっと新しい仕事(学習系)のネームのゴーサインが出た。(合計125ページ)

漫画家になりたいと思っている若人よ!
漫画家には「アイドル路線」と「職人路線」があると思っているといい。

「アイドル路線」は言わずと知れた「週刊少年ナントカ」みたいな花形商業漫画雑誌で活躍する漫画家のことだ。
現代社会にいかに受け、そして当たれば大金が転がり込む舞台だ。

「職人路線」は絵は今風ではないが、その人ならではの絵柄や世界観、ストーリーの面白さなど、新鮮さは求められないが、青年誌では絵のリアルさを求められたり、読者を必ず満足させるネーム作りと、実力のいる世界だ。

アイドル路線は戦いが熾烈だ。
面白さよりも見た目のファッション性やキャラクター、現代感覚が受ける要素だったりする。
そしてここでヒットを飛ばし、十年後も第一線で戦うことは一握りといってもいい。
読者に受けなければたちまち仕事がなくなる。

しかし、そこで戦えないワタシのような地味マンにも仕事の場はあるのである。

それが「学習系職人路線」である。
この舞台は漫画雑誌に限らず、企業PRや学習漫画など、書店で売られていない仕事がたくさんあったりする。

「学習系職人路線」を長らくやっているとイカンのは、批評する読者がいないので、今一つ張り合いがないのと、一番困るのが「低賃金」なことである。
そして原稿は「買い取り」ということで、いくら増刷されようとも「印税」など入ってこないのであ〜〜〜る!

私のひと昔前の仕事でゲームブック(絵が稚拙)があるのだが、
これは毎年1〜2回は増刷されているというのに、印税はゼロ!(原稿料ページ当たり6000円くらいだった。)
こういう単行本の場合、「グロス」と言って一冊につきいくら、と予算が決まっている。
そうするとあまりページ単価は関係なかったりする。
追加でカットが出ても稿料に関係なかったりもする。(単価が下がるだけ)
(あるところは4000円ですた。・・・・こんなにひどいのは初めて。
イヤ、学生時代やった仕事でカット1点500円というのがあった。
しかも版元が夜逃げして無報酬・・・・)

しかも!
こういう仕事は直接出版社(クライアントともいう)から仕事が来るわけではなく、
編集プロダクションが間に入っていることが多いので、原稿料はそこから、という場合が多い。

ーーーこういう仕事を長くやっていると、同じ本で仕事をしている漫画家さんと原稿料の話になったりするのだが、編プロによって(同じ仕事なのに)稿料が全然違ったりするのである!!

今日ゴーサインが出たところは、他の漫画家さん達と比べてページ2000円も安いのである!・・・・(125ページもあると25万円の差額!!)
しかも送られて来るシナリオが、ストーリーになっていなくて(サワリの部分しかない)落ちまで展開するのは私の仕事なのである!・・・・。

今はライターさんが漫画のネームまで仕上げて漫画家に発注している場合も多々あるのですが、(漫画家はイラストレーター扱いなんですね・・・)シナリオにもなっていないことも結構ある。

で、驚くのが、こういうライターさんが漫画のネームの形にする仕事を
「構成」と言って、ライターさんに「構成料」を支払うのです。
漫画の素人さんの切ったネームに構成料ですよ?
で、他の仕事でこの構成をしているライターさんに、その料金を尋ねたことがあるのですが
「今やっている仕事は安くってページ5000円なの。」

「安くて5000円」ーーーーーーショックでしたね。
だって私、大抵この「構成」の段階から仕事してますから。
5000円×ページ数、損してるんですね。
それ以上にショックなのが構成料金と比べて「漫画を描く労力」がすごく安いこと。
たかだか数ページのネームなら数時間でできるけど絵を描いてスキャンしてデータ化して、ごみ取り、トーン、着色などの仕上げをして・・・は一日では終わりません。
ページ数が増えればもっと時間がかかるのは当たり前です。
きっとネームにかかる時間より5倍以上はかかると思う。
その稿料なら私も構成、やりたいぞ!(熱望)

だいたい漫画の素人さんの切ったネームはコマを割って必要な台詞をキャラクター(バストアップ)に言わせているだけで、状況説明、画面の構図、メリハリ、伏線、テンポなどまるでない。
もちろん絵的に面白く見せる工夫、説明などまるでない。(当たり前です)
ライターだから、全てを台詞で説明しているのです。
しかもそれでオーケーになる。
その構成をチェックする版元も「漫画の素人」ですから判断のしようがないんですね。
版元がチェックするのは「間違いがないこと」、「絵的に問題がないこと」の2点です。

私は、どうせこちらでネームを作るので、この漫画で説明したいものや狙い、資料をくだされば、あとはこっちで漫画にしますから、と言うのですが、そこからスタートしても原稿料は「漫画を描く労力分」しかくれないのです。
で、あげくには「原作誰某」になっていて。

つまり
構成料+漫画原稿料=漫画原稿料というわけ。

他の漫画家さんも同じように仕事をしているのか、というとそんなわけではなく、
言われた通り描いている場合が多分ほとんどです。
何故わかるかというと、読んでいて漫画的に面白くないから。
やっても無駄な労力だからやらないのです。

で、私達夫婦がなんでここまでこだわって仕事をしているのか、というと、
「面白くなくても言われた通り描いてりゃいいんでしょ。」という仕事を
長丁場描くことに耐えられないから、です。
それとわざわざ手に取って「読む」という労力をはらってくれる子供達につまらない思いをさせたくないから。

このシーン、このメッセージ、ここを理解して「なるほど!」と読者が喜ぶだろうと想像して描いているからこそ、反響のない仕事でもなんとかやっていけるんだと思います。(そこに自分のやった仕事の意義がある、と思っている)

確かにここまでこだわらなくても仕事を長年もらい続けている人もいます。
でも私は常に向上心を持って取りかからないと、いつかはきっと自分のモチベーションが下がってしまう、と危惧するのです。

「これだけやってもギャラは同じ(それ以下も多い)」
そういう仕事が多いのが、この「学習系職人路線」の漫画家なのです。

で、絵柄が漫画では重要なのですが、
絵柄だけの勝負でなく、中身も合わせて勝負しないと生き残れない、と考えているのですが中々思うように仕事をもらえないのも事実です。
旦那のやった新ひみつシリーズはアマゾンで読者から5つ星をもらい、未だ古本に出てません!(私も古本には出ていません)

「昔はそういうところをわかる編集者がいたのにな〜〜。」というのは旦那のボヤキですが。

今は「アイドル路線」で活躍している漫画家も、数年後にはこちらの世界に来ている可能性も多いです。
ですが、それで面白い「学習系職人漫画」が描けるのか、というと疑問符がつくところです。
「キチンと描いてあるけど面白くない」ことがあるのです。

ーーで、漫画家を目指そうと思っている若人よ!
アイドル路線を外れたら、こんな厳しい世界が待っているよ、と言いたいのです。
そこはいい仕事をしても報われない「ワーキングプア」の世界です。

漫画という表現方法が好き!という人でないと続けられない世界です。

(近日中にそのシナリオと私の描いたネームをアップして、
その違いをお見せしたいと思います。)
by mieru1 | 2007-06-12 00:18 | 仕事 | Trackback | Comments(2)
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Commented by kadoorie-ave at 2007-06-19 07:30
沁みるお話です....(沁みてヒリヒリする)。
すごくわかります。。。わかるけど、私が思った以上に学習系の漫画家の生きる道はきびしいなぁ。。。
私も、ほとんどは編プロかデザイン事務所からお仕事をもらう身。バブル『前』からギャランティーも変わっていません。(バブル、真っ盛りの頃のギャランティーは少しだけよかったかな。)デサイナーさんの力は大きいのですが、それでも手にする額の桁が違う気が...。イラストレーターの仕事のみで暮らしている人も(有名人以外)少なくて、大抵デザイナーもやってるんですが私はイラストのみなのでねぇ。家内制手工業+「かぁさんは〜夜なべ〜をして〜」+下請け・内職な感じであります。好きじゃなきゃ明日も見えないしやってられないですねえ。
Commented by mieru1 at 2007-06-19 23:50
>光子さん
今、直接版元さんからいただいているお仕事があるんですが、その原稿料の差にビックリです。
旦那は昔編プロに勤めていましたが、マージンを半分取る、というのは本当なんだなと実感してます。
末端の人間が一番安い労働料って・・・・と思います。

でもでも、イラストレーターさんが漫画の仕事をやって、そのあまりに安い原稿料に驚いて二度とやらない!という話も聞きますよ・・・
ただイラストは漫画と違って点数が少ないからいかに仕事をもらうか、にかかってくるでしょうね。(それも大変です)

ホント毎日が「明日はどっちだ?」ですよ。
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