小島剛夕 「料理人 ーつくりにんー」  を読んで

読みました!
全4巻ですが、少しもダレることなく一気に最後まで。
ストーリーは江戸時代。十年に一度の「包丁式」に初めて関東(江戸)から選ばれた料理人(主人公の父)が
幼なじみでライバルの料理人の策略に嵌められて失敗し、料理人としての責任を感じて自殺してしまう。
この悪役は母親、父の弟子まで殺すことになり、真犯人を知った娘は料理対決で親の復讐を果たそうと決心するもの。

すんごく面白かったのですが、打ち切りにあってしまったのか、あと2巻あったらとても完成度の高い作品になっていたのでもったいない!の一言でした・・・
(以下、軽くネタバレアリ)



まず、やっと探し当てた師匠の元でする修行に一巻。最後の仇を討つ件に一巻。
これで完璧。
残念なのは、ずっと「親の仇は料理対決で」と心に誓ってブレずに話が進んで来たのに
突然打ち切りが決まったのか風呂敷を畳むため、無理矢理、仇と同じ策略を主人公もするところ・・・
故に料理の腕比べというのは無しに。
それだから最後の対決で使うはずだった包丁を頼んである刀鍛冶のおじさんの所にも行けないで終わってしまった・・・・・
3巻を読んだ時点で「これ、本当にあと1巻で終わるの?」と思わず旦那に聞いたらこんな結末になるとは・・・




ストーリーの面白さの肝になるのはやはり主人公が「女」だという壁でしょう。
敵と対決するにも料理の腕を上げて対等にならなければいけないし、かといって女料理人なんて許される時代ではない。孤立無援。
しかもどんな酷い目に遭っても決して心が荒む事無く、目的のために精進していく主人公の清々しさ。

それにしても、料理人が主人公ということで、職人が題材のせいか、所々で小島先生の仕事に対する姿勢みたいな言葉が出てきます。
その言葉に重みがあり、昨今の「かっこいい決め台詞」が出てくる若者漫画とは違う、大人の漫画です。


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それにしてももったいない!と悔しく思います。
そして、人気次第で長くも短くもなる漫画連載。
最初から「このページ数・巻数で完結」というくくりがあったら、もっと作品の質が上がるのでは?とも思いました。(テレビの大河ドラマや朝ドラのように)
長さのワクが決まっていれば、だいたいこの話数までに事件があって、キャラを出して、話が進んで・・・とストーリーも創りやすくなると思うんですよ。

「人気次第でゴール(最終回)がどこになるかわからない。」
作品の完成度を考えるとこれほど怖いものはありません。
それは毎月12ページで伝記漫画を描く仕事をしているから特にそう思うのかもしれません。
最初から全○話で終わる、とわかっていれば途中から読む新規の読者も、最初から読んでいる読者も最後までつき合ってくれるのでは・・・?なんて思ったり。
それにはやはり、面白いストーリー漫画を決まった話数で描ける力のある漫画家を選ぶ、編集者の目も問われるはずです。企画ものだっていい。
そして人気があれば新シリーズとして数話完結の約束で始める。
そのくらいの長さでやった方が漫画家のモチベーションも保てると思うんですよ。
いくら人気があっても十年もやっていたら飽きちゃうだろうし、ネタも切れちゃうだろうし、何より作家本人が歳とってしまうので、雑誌の読者層とズレて来てしまうでしょう・・・

最近の読者が「ダラダラといつまでも続く漫画に辟易としている」様子から、試験的にそういう連載漫画があってもいいんじゃないか?と思ったり。
それに短い巻数なら興味を持った新規の読者も遡って買ってみようか、という購買意欲にも繋がってくるんじゃないかと思ったり。
(ワタシとしては新規で全巻買うとしたら10巻前後が限度かな・・と。)
価値観は人それぞれですが、やっぱり娯楽である漫画は読み終わって「ああ、面白かった!」「感動した!」っていう満足感が得たいのだと思います。
期待して映画館に足を運ぶのと同じです。
お話が完結するというところに一つのカタルシス、満足感、充実感があると思うのです。(つまらない作品では駄目ですが・・)
でも逆に、もし自分には合わなかったとしても、そのくらいの短さなら「時間と金を返せ!」ということにもならないのでは・・・・・。



ーーー「料理人」を読んで、あまりにもったいない!と思ったもんだから、ついこんな事まで考えてしまいました。
by mieru1 | 2011-11-20 19:47 | いろんな感想 | Comments(0)
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